ゼウスBヘルド、正直あまり馴染みのある人ではないですし、またこの人の名前を知っている人はそれなりのロック系洋楽通ではないかと思ってるのですが、個人的にはErasure"Blue Savannah"のカップリング曲"No G.D.M."(Gina X Performanceのカバー)のクレジットに名前を見かけたのが最初だったと思い(思い出すためにまた正確を期すために検索はかけましたが)その時はゼウスってすげえ芸名だなーという程度で、その後UKのハイブリッドなエレポップバンドFashionの1stを全面的にプロデュースしていたのが彼だったと知ったくらいです。しかしこのように今となっては入手困難なソロLPなどから本人などが選曲した曲の数々を聴くと、まずは楽しいですがさらに聴きこんでいくと、本作アルバムジャケが象徴的に思えてくるスタジオ内でサウンドを作り込んでいくタイプの人だと分かってきます。曲毎などの逐一は書けないので全体的な印象になりますが、全体的にはやはり1970年代の香りがする、シンセがいかにもシンセサイザー然とした頃と言いますか、言ってしまうとこれみよがしな使い方でイメージとしてはスペースやテクノロジーといった雰囲気を醸し出しているのが1970年代的でしょうか。またライナーノーツでも特徴的に書かれているほど、全曲的なほどボコーダーが使用されているのもまた現代からするとさすがに古さを感じてしまう部分ではありますが、いわゆるレトロフューチャー感として聴くとやはり楽しく聴けます。

興味深いのでDISCOGS情報なども参考に調べてみると本名はBernd Heldでドイツ人、元々ドイツのハードロックバンド(Deep PurpleやUriah Heepタイプとのこと)Birth Controlに在籍し、その後バンドという共同作業よりもやはりスタジオに籠りちまちまとサウンドを作り上げて行きたかったのか、ソロとしてアルバムを何枚か70年代終盤から80年代に掛けて作っていったようです。しかしそれらソロアルバムよりも奥さんのGina XとのGina X Performanceとしての3枚とGina Xの1枚は今でも再発されているほどなので有名ではないかと思います。本作でもGina X Performanceの代表曲"Nice Mover"やカルト的なUSディスコバンドのRocketsを氏がミックスした曲辺りも象徴的なように、言わば70'sサウンドと80'sサウンドの架け橋となったようなプロデューサーの一人ではないかと思うのですが、無理に比べてしまうとトレヴァーホーン(英)やジョルジオモロダー(伊→独)やパトリックカウリー(米)辺りの年代的には後輩ではありますが(1950年生まれ)彼らが表の方だとするとやはり裏方としてそれらサウンドを築いていった重要人物の一人なのだろうと、本作だけ聴いても分かるような重要曲の数々です。

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