Dear Catvatina,

いまでも思う君のこと、こんな僕でもやさしい気持ちになれる。すべて君のおかげ。そして思い出す君と過ごした日々。君のスケジューリングのまずさで冬山の吹き付ける吹雪の中、やっとの思いでたどり着いた山小屋の一夜、二人で凍死しそうになりながら必死でつけた暖炉の赤い炎。

沢下りで君は岩に頭をぶつけて半身不随になりかけたね。気絶して川のしぶきが乾ききらない君の横顔の美しさ。フリークライミングでは足を踏み外し、ザイル一本だけで僕と繋がったまま標高2000Mで宙ぶらりんになっていたっけ。突然の風のおかげで君は岩壁にしがみつく事ができたから良かったけど、あのとき僕はもう一秒でも遅かったらザイルをナイフで切るつもりだったんだ。その君のすがるような瞳。

そしてあの暑い日、二人で波打ち際をかけっこしてたら、コーラのビンの破片で君は土踏まずをざっくりと切っていたね。さすがに君のドン臭さにはうんざりしてて、後ろで君が倒れているのに気づかない振りでどこまでも走っていこうと思ったんだけど、でも僕を呼ぶ声。結局振り返って君の元に駆けつけた。あのとき僕は自分の意思の弱さにもうんざりしたんだ。でも、白いワンピースの君をおんぶして、足から滴る血がその白を染め、打ち寄せる波の中へ一滴一滴落ちていくさまの美しさを今でも鮮明に覚えている。だから後悔はしていないよ。

♪CAVATINA / STANLEY MYERS